クグロフとは?
クグロフはブリオッシュ生地のお菓子です。甘いクグロフは、サクランボの蒸留酒(オー・ド・ヴィ)に浸けて柔らかく戻した干しブドウを生地の中に入れて、アーモンドで飾り付けしてあるのが特徴です。
伝統的にアルザスの人々は、日曜日の朝食の時やお祝いの時などで食べていました。
今日ではお菓子屋さんやパン屋さんでいつでも買うことができます。パーティーやレセプションなどでクグロフがあると、やはり気分が盛り上がりますね。
クグロフは通常2、3日保存が可能です。乾燥してしまったら、薄く切ってトースターやオーブンで軽く焼いたり、コーヒーに浸したり、フレンチトーストにしたり・・・お好みに合わせてレシピを作ってみてください。
しょっぱい系のクグロフは、店頭に並んでいることはほとんどないと思いますが、パーティーやレセプションではよく見かけます。細切れベーコンとクルミを入れるのが一般的なレシピです。
Léon Daul 著(Editions du Donons )« ‘s Elsàssbüech, Le livre de l’Alsace » という本によると、クグロフの名前の語源は、帽子や玉を意味する「Kugel」という言葉だそうです。
確かにクグロフの形は帽子に似ていますよね!
語尾のHopfは、(発酵して生地が)ふくれるという意味の「hüpfen」や「lüpfen」が語源だろうと考えられています。
クグロフの歴史を紐解く
クグロフのルーツに関しては様々な言い伝えがありますが、その中には共通点もあります。ではどうやってアルザスに登場したのでしょうか?
昔々あるところに、アルザスのリボーヴィレという町にクーゲルという陶器職人が住んでいました。ある晩、扉をたたく者がおり、見ると3人の外国人が一晩泊めてほしいと言いました。クーゲルは旅人を迎えて、食事も出してあげました。翌朝、3人はこのおもてなしに対する感謝を述べ、夜中に作っておいたお菓子とその焼き型をお礼としてクーゲルにあげました。そのお菓子は筋がはいった美しい形をしており、味も素晴らしいものでした。不思議な3人の旅人が去った後、クーゲルは彼らが東方の三博士であることに気がつきました。
こうしてクーゲルはクグロフとその型を手にした最初の人となったとさ。
別の言い伝えではクーゲルは菓子職人と言われています。
クグロフには粉砂糖を振りかけることもあります。ある言い伝えでは、東方の三博士が陶器職人クーゲルの家にたどり着く前に、山頂が雪で覆われたホネック山(ヴォージュ山脈にある山のひとつ)を見て、その様子を模して残したかったからだと説明しています。
更に別の言い伝えでは、東方の三博士が頭に巻いていたターバンの形がクグロフの形のもとになったと言われています。
一方、マリー・アントワネットが故郷オーストリアでポピュラーだったクグロフをフランスで広めたという説もあります。
ところでマリー・アントワネットがフランスで最初に一泊したのはストラスブールなんですよ。晩餐会にクグロフが出たかもしれませんね・・・そのメニューがあったら見てみたいです。
クグロフは、ある歴史上の人物にヒント与えて別のお菓子を誕生させたと言われています。
その人物とは、ポーランド王を退位後にロレーヌ公となったスタニスラス・レクザンスキ(スタニスワフ1世レシチニスキ)です。・・・誰、それ?知名度低いですよね。
スタニスラス・レクザンスキは、ルイ15世の妃マリー・レクザンスカの父親、つまりルイ15世の舅です。マリー・レクザンスカ自身がフランス王妃でありながら、ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人が目立ちすぎて影が薄いですが・・・
さて、ある日のこと、出されたクグロフがパサついていたため、スタニスラス・レクザンスキは、それにワインをかけて食べることを思いついたそうです。しかし後にワインではなくラム酒を使うことにしました。こうして誕生したのがババ・オ・ラムというお菓子です。
スタニスラス・レクザンスキは、アルザスに住んでいたことがあります。ババ・オ・ラムをどこで発明したのかは不明ですが、マリー・アントワネットより以前の時代にクグロフがフランスに存在していた、そしてそれはアルザスだったと考えてもおかしくないですよね。
クグロフのスペルと焼き型
クグロフのスペル(綴り)はいくつもあります。Kugelhopf, Kouglof, Kugelhof, Köjlopf, Gugelhupf・・・
また、一般的に使われているクグロフの焼き型は、アルザスのスフルナイム(スフレンハイム)の陶器製の焼き型です。
かつては銅製の焼き型も使われていたようです。
焼き型の形は、裾広がりの円錐台で、上の部分は丸みをおびて、全体を見ると帽子のような形ですが、真ん中がくぼんでいます。
しかし、よく見てみると、細かいデザインは非常にバラエティーに富んでいることに気づきます。特に、広がり方、筋の太さ、傾斜具合は型によっってかなりの違いがあります。

多色使いの型は、全て職人さんがひとつひとつ手作業で描いているので、模様に個性が表れています。
どんな大きさのものでも、クグロフは楽しさをもたらしてくれる
伝統的なクグロフのレシピには、小麦粉500グラムを使うものが多く、クグロフのサイズは大きいです。
手作りのものであっても、お店で買ってきたものでも、まずそれを家族や友達と分け合う楽しみがあり、それから味わう喜びが続きます。
今日では、一人用のミニクグロフやその焼き型も買うことができます。おや、分け合う楽しみはないのでしょうか?いいえ、そんなことはないですよ。小さいサイズのクグロフでも、伝統を分かち合う喜びは大きいものと変わりません。
クグロフには、アルザス流のみんなで楽しむ術が含まれているんですね。
参考 :
Alsace Lait – Le Kougelhopf, une tradition alsacienne
Maison du Pain de Sélestat – Le kougelhopf, connaissez-vous son histoire?
Kouglof – L’histoire du kougelhof
L’Est républicain – Savez-vous quelle célèbre pâtisserie doit-on à Stanislas ?